
絵本作家の祐彩(ゆうせい)です。
絵本『コロネのおしりはどっち?』を読んでくださった方から、「読むたびに違うことを感じます」
といった声をよくいただきます。
ひとつの物語なのに、読む人の気持ちや状況によって、まったく違う表情を見せてくれる…。
それが、絵本の不思議であり、魅力のひとつなのだと思います。
絵本『コロネのおしりはどっち?』は、チョココロネが自分のおしりはどっちかを悩むお話です。
パン仲間に聞いても答えはバラバラ。
小さいほうだよ、大きいほうだよと意見が分かれて、コロネはますます混乱してしまいます。
いったい、どっちが正しいのか…。
そんなふうに迷う気持ち、きっと誰もがどこかで感じたことがあるのではないでしょうか。
このお話には、はっきりとした正解はありません。
でもその代わりに、読む人の中にいくつもの気づきが生まれるようです。
子どもは「どっちがおしり?」とワクワクしながら、大人は「私もこうやって迷ってきたな」とコロネに自分を重ね合わせたり…。
そして物語の後半で、コロネは自分で決めます。
「どっちがおしりか」ではなく、「自分で決めていい」ということを。
それは大きな声で叫ぶような勇気などではなく、本来の自分がストンッと、自然にまっすぐに出てきたような感覚。絵本のシーンでは、「まっすぐ」というより、ぐるぐると巻き始めちゃっていますが…。
この瞬間、コロネの世界はぐんと広がっていきました。
「自己肯定感」という言葉にすると、少しかしこまって聞こえますが、その本質はきっと「これでいいんだ」と自分にうなずける気持ちのこと。
コロネのように、人と違っても、自分の選んだことを大切にできる。
その小さな感覚や積み重ねこそが、自己肯定感のはじまりだと思うのです。
絵本を読むたびに感じ方が変わるのは、きっと、僕たちの中の新しい自分が育っているからかもしれません。
だからこそ、絵本は何度でも開きたくなる。
子どもと一緒に笑いながら読んで、ときどき自分の中にも「おしり問題」を見つけてみる。
正解を探すよりも、そのプロセスを楽しむことが、きっと何よりも大切なんじゃないかなと思います。

心にあかりが灯る体感型絵本ショー『ライブ絵本ルーミーパーク』でも、絵本『コロネのおしりはどっち?』を上演中です。
ぜひ遊びに来てくださいね。