
絵本作家の祐彩(ゆうせい)です。
大人になってから、ふと心が「ぎゅっ!」となる瞬間はありませんか。
「もっとちゃんとしなきゃ」
「失敗しないように気をつけないと」
「周りに迷惑をかけないように…!」
そうやって気づかないうちに、自分らしさより「正しさ」を優先してしまう。
僕自身、16年前に独立した頃、その気持ちを抱えてしまうことがよくありました。
もし今、そういった気持ちて手を繋いでいる方がいたら、あるチョココロネの物語をご紹介したいと思います。
子どものころは、みんなと同じじゃなくても平気だったりします。
好きな色、好きな遊び、好きな洋服。
周りを気にせず選んでいたはずなのに、背が伸びるにつれ、その自由さをどこかに置き忘れてしまうのかもしれません。
絵本『コロネのおしりはどっち?』の主人公・チョココロネも、そんなふうに自分を迷いながら生きています。
そんなコロネから、正しいといわれる事ではなく、自分の中にそっと残っているちいさな声に耳を澄ませる大切さを、思い出させてくれます。
がんばりすぎてしまう大人の心に、ふっと風を通してくれることがあるのです。
僕たちはつい、「普通」「みんな」「当たり前」という言葉に引っ張られてしまいます。
でも、コロネが自分をどう決めるかは、本当は誰にも決められないのです。
そこには正解も不正解もなくて、ただ 自分で選んでいい、決めていい という事実だけがあります。
その軽やかさに触れると、大人が持参しがちな比較や評価の重さが、少しだけやわらぐのです。
「違う」ということは、本来は「その人の輪郭」みたいなもの。
誰かと違うことを気にする必要は、本当はどこにもないと思うのです。
忙しく働いて、人間関係に気を遣って、自分を後回しにしてしまう毎日。
そんな大人(かつての子ども)にこそ、絵本を開く時間は大切だと感じています。
絵本は、癒しや気づきを押しつけるものではありません。
ただページをめくるだけで、自然と心のスピードがゆるむ…。もしかしたらドラえもんのひみつ道具の1つなのかもしれません。
読みながら、「わたし、少し頑張りすぎてたかな」「もっと気軽に選んでいいのかも」
そんなふうに、心がゆっくり呼吸を取り戻していくきっかけになります。
コロネのおはなしを読むたび、僕自身も「自分で決めていい」「違っていていい」という感覚を思い出します。
大人になると、正しさを追いかけるクセが自然と身に付きますが、ときにはコロネのように肩の力を抜いてみることも大切です。
その瞬間、自分の中に眠っていたやさしい余白に、気づくことがあります。
その余白が広がると、選ぶことも、迷うことも、間違えることも、すべてが少しだけ愛おしく感じられるようになったりするのです。
がんばりすぎている時、人は「わたしは大丈夫」と思い込んでしまうものです。
でも、ほんの数分、コロネの世界に立ち寄るだけで、心のどこかにある解ける場所を、思い出せるかもしれません。
僕は絵本を読む理由に、目的なんていらないと思っています。
ただ静かにページをめくり、自分の感じたこと、想像したことを大切にする——。
そんな時間が、読む人の気持ちを少しやさしくしてくれるのではと、思っています。

あなたの感性や想像力に触れる体感型絵本ショー『ライブ絵本ルーミーパーク』にも、ぜひ遊びに来てくださいね。