
絵本作家の祐彩(ゆうせい)です。
今から16年前、僕は「息子と一緒にいる時間をつくりたい」という、とても個人的な理由で会社を辞め、起業しました。
当時は、社会を変えたいとか、大きな理想があったわけではありません。
ただ、目の前にいる小さな息子と、ちゃんと向き合っていたかった。それだけだったと思います。
子どもと過ごす時間が増えるにつれ、僕の中には、ひとつの問いが何度も浮かぶようになりました。
「どうすれば、この子は幸せになれるんだろう?」
すぐに答えが出る問いではありません。
でも、その問いは、日々の暮らしの中で、少しずつ形を変えながら、今も僕のそばにあります。
息子の送り迎えで足繁く通っていた幼稚園。
そこにいた子どもたちは、みんなきらきらしていました。
特別なことをしているわけではありません。
走って、笑って、泣いて、全力で毎日を生きている。
僕に話しかけてくれる時なんか、そのきらきらパワーでこっちまでにっこりキラキラになっていたものです。
その姿が、強く心に残っています。
そんなとき、ふとこんな思いが浮かびました。
「息子だけじゃ足りないな」
「この子たちみんなが、きらきらしたままでいられる世界であってほしい」
今思えば、少し大げさで、分不相応な考えだったかもしれません。
でもそのときの僕は、なぜかその気持ちを無視できませんでした。
何かしたいと思っても、何をすればいいのかはわかりませんでした。
行政に足を運び、子どもたちへ向けたポスターを無償で作らせてほしいとお願いしたこともあります。
放課後子ども教室で、子どもたちと関わる場を提案したこともありました。
けれど、現実はなかなか思うように進みません。
断られたり、届かなかったり、空回りすることも多かったです。
そんな中で、少しずつ気づいたことがあります。
子どもだけに何かを届けても、どこかで途切れてしまう。
親も一緒に、同じ時間を感じ、同じものを見る場が必要なのではないか、ということでした。
その流れの中で、絵本という表現にあらためて向き合うようになりました。
そして、自分がこれまで関わってきた音楽やライブステージの世界と、自然に重なっていきました。
こうして生まれたのが、ライブ絵本という形です。
絵本を読んだり、聞いたりするだけでなく、音を感じ、感性を使い、からだごとその世界に入っていく…。その時間を、親子で一緒に過ごす。
ライブ絵本ルーミーパークを続ける中で、ある変化が起きました。
「このおはなしを、絵本にしてほしい」
そんな声を、少しずついただくようになったのです。
こうして形になったのが、絵本『ハレとアメのきらきらあつめっこ』でした。
16年前からぼんやりもっていた想いと歩んできた道程、そこからうまれたライブ絵本用の物語『ハレとアメのきらきらあつめっこ』
この物語は、たくさんの方の後押しによって、ライブ絵本の時でしか観れない物語から、おうちで読める一冊の絵本になりました。
支援者の方々の力を借りて、全国の児童養護施設にも届けられています。
絵本『ハレとアメのきらきらあつめっこ』には、目には見えない「きらきら」という存在が描かれています。
それが何なのか、どう受け取るかは、観る人、読む人それぞれ。
ただ、ライブ絵本を観たあとや、絵本を閉じたあとに、日常の中で、何かを少し感じ直すきっかけになったら…。
そんなふうに思っています。
いま、16年を振り返ると、決してまっすぐな道ではありませんでした。
迷い、遠回りし、立ち止まりながら、ここまで来た気がします。
でも、出発点はずっと同じ場所にあります。
息子を想った、あの日の気持ち。
子どもたちの、あのきらきらした目。
ライブ絵本も、絵本『ハレとアメのきらきらあつめっこ』も、その延長線上に、たまたま生まれたひとつの形なのかもしれません。
これから先、どんな物語が続いていくかは、次のページをめくるまでわかりません。
けれど、また誰かの心に、そっと何かが灯るなら。この世界にきらきらが増えるなら、僕はこれからも、この道を歩いていくのだと思います。
