
絵本作家の祐彩(ゆうせい)です。
子どもの頃は、「好き」「やってみたい」「これがいい!」そんな気持ちが、迷いなく口から出てきたものです。
でも、大人になるとどうでしょう。
誰かの評価や、まわりの目を気にして、いつのまにか自分の本当の声を聞き逃してしまうことがあります。
私、祐彩(ゆうせい)の絵本『コロネのおしりはどっち?』は、チョココロネパンが「自分のおしりはどっち?」と迷い悩むおはなしです。
子どもたちにはおもしろく、大人や親御さんにはちょっとドキッとする絵本…なのかもしれません。
この絵本の読み聞かせをすると、子どもたちは真剣な眼差しで、夢中に物語の中に入っているのが面白いくらいわかります。
一方で親御さんや、かつての子どもたちは、静かにページを見つめている時があります。
後で感想を言いにきてくださる多くの方が「コロネを自分のことに重ねて見てしまいました」といったようなことをおっしゃいます。
もしかすると大人にとって絵本『コロネのおしりはどっち?』の読み聞かせ時間は、誰かに合わせてしまう自分を、そっと振り返るひとときなのかもしれません。
絵本は、子どもに読み聞かせるだけのものではなく、ときに大人が立ち止まるための鏡になったりするのかもしれません。
事実、『コロネのおしりはどっち?』は、赤ちゃん絵本や幼児絵本として販売されているのですが、親御さんや、絵本の読み聞かせをされている方からの感想もよくいただきます。
処女作絵本『かいとう あっというま』の時から、子どもも大人も楽しめる絵本を、目指していた欲張りな僕にとっては、とても嬉しい事件です。
この絵本には、「これがよい」「こうしよう」という答えは描いていません。
コロネが最後、どんな姿になったのかも、読んだ人それぞれの受け取り方があると思います。
大切にしたかったのは、「自分はどうだろう?」と、そっと心の中に問いが生まれること。
大人になるとどうしても「正解を探す癖」がつきがちですが、迷うことって、本当は悪いことじゃないのだと思います。
「なにを選ぶか」よりも、「どう感じているか」を見つめること。その方がずっと、心をやわらかくしてくれるのではないかって。
絵本を読む時間が、そんな、自分を取り戻す小さなきっかけになってくれたら「なおうれし」です。
絵本『コロネのおしりはどっち?』は、大人にとっては、心のどこかに自分の声がかすかに戻ってくる、そんな「感じる絵本」なのかもしれません。
一方で子どもたちは、コロネの行く末を当たり前に見るのだろうし、ただただ、楽しんでくれているのだと思います。
子どもたちは今まさに、自分らしさを全力で楽しんで生きていますからね。
ぜひ、子どもと一緒に『コロネのおしりはどっち?』を開いてみてください。
子どもが自由に答える声を聞きながら、ふと自分にも同じ問いを投げかけてみる。
「私はどっちだろう?」そんな時間こそが、絵本がくれる一番の贈りものかもしれません。

心にあかりが灯る体感型絵本ショー『ライブ絵本ルーミーパーク』でも、絵本『コロネのおしりはどっち?』を上演中です。
ぜひ遊びに来てくださいね。